2026.09.04 09:00書けなかった日のこと書いても、書いても、書けない。そんな日が、かつてありました。正確には、今でも「書けない日」はあるのですが、あの時の感覚とは違います。まだ初段か二段くらいだった頃のことです。昇段試験の課題で、条幅を書いていました。頭の中では、「ここからこう入って、ここで筆を返して……」と、書く線を思い描いています。けれど、紙に現れたものを見ると、「違う。」...
2026.08.11 09:00自分にしか書けないもの展覧会の作品に取り組む時期になると、毎回自分に問いかけることがあります。「自分にしか書けない作品ってなんだろう。」 書道を続けている以上、誰かの真似ではない自分だけの表現をしたいと思うのはごく自然なことです。「もっと自分らしく。」「もっと個性を。」「私だけの線を。」そんな思いが強くなるほど、なぜか筆の動きは硬くなり、線からのびや...
2026.07.13 09:00美しい言葉を書くということ私の教室では、毎月のお稽古で三行ほどの短い実用書のお手本をお渡ししています。日々の暮らしや季節のお便りで自然に使っていただけるように、季節の移ろいを感じる言葉や、美しい響きを持つ日本語を選び、一つひとつ私自身が文章を綴っています。「今月はどんな言葉が、生徒さんの毎日にそっと寄り添ってくれるかな。」そんなことを思い浮かべながら言葉を選ぶ時間...
2026.05.29 09:00明日はもっといいものをスペイン、バルセロナの空にそびえるサグラダ・ファミリア。着工から144年が経つ今も、建築の途中です。その設計者である、アントニ・ガウディ(Antoni Gaudí)の没後100年にあたる2026年6月、聖堂で最も高い主塔「イエスの塔」がついに完成の日を迎えると言われています。かつて、彼が建築の現場を去る際に、弟子たちにいつも掛けていた言葉...
2026.05.01 09:00時には、遠回りをしてみませんか日々の暮らしの中で、私たちは無意識のうちに「最短距離」を探してしまっていることがあります。先日、教室で生徒さんの筆運びを見ているときに、ある心の動きに気づきました。それは、今書いている線の途中で、すでに意識が「次の線」へと向かってしまっていたこと。心が先走ると、筆先はどうしても近道を選ぼうとします。角を急いで曲がったり、次の線へ向かうため...
2026.04.01 09:00「教える」という名の学び教室を開設して、早いもので2年の月日が流れました。振り返れば、行きつ戻りつしながらの、ゆっくりとした歩みだったように思います。どんなお手本が心に響くのか。この運筆をどう言葉にすれば伝わるのか。一人ひとりの個性をどう引き出すべきか――。悩み、迷い、試行錯誤を繰り返すうちに、あっという間に過ぎ去った2年間でした。最近になって、少しだけ肩の力を...
2026.03.06 09:00学びには「順番」があるレッスンをしていると、生徒さんが急にできるようになる瞬間に立ち会うことがあります。先日までおぼつかなかった線が、ある日ふっと安定する。迷っていた筆の動きが、するりと滑らかに動くようになる。けれどその変化は、決して突然生まれたものではありません。アメリカの教育心理学者 ベンジャミン・ブルームは、学びには段階があると考えました。「Bloom'...
2026.01.30 09:00「上手くなる」を手放してみる「いつかうまくなるのかなぁ。」書道を始めてまもない生徒さんの口から、よくこぼれる呟きです。そう思う気持ちはとても自然で、かつての私も同じように考えながら書いていました。けれど今は、少し違う心持ちでいます。 本当に、目指すべきなのは“うまくなること”だけでしょうか。私たちは、何かを始めるときに無意識のうちに結果を求めてしまいます。...
2026.01.05 09:00新しい年に新しい趣味を新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。さて、新しい年が始まると、「何か新しいことを始めたい」と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。中でも「新しい趣味を持ちたい」という思いは、新年ならではのものかもしれません。しかし、いざ何をしようかと考えると選択肢が多すぎて迷ってしまい、そのまま日々が過ぎてしまう...
2025.12.26 09:00展覧会に出品するということ12月の初めに東京都美術館で開催された「第60回書心展」に、私も出品しました。会期中、何度も会場に足を運び、ずらりと並んだ作品を前にしてあらためて感じたのは、展覧会に出品するという経験は、通常のお稽古だけではなかなか得られない大きな学びがある、ということでした。今回は、これから展覧会に出品してみようかなと考えている方に向けて、少しお話しし...
2025.12.12 09:00大人だって褒められたい最近、あなたは誰かに褒められましたか?そう聞かれて、すぐに思い浮かぶ人は案外少ないのではないでしょうか。大人になると、頑張っていることが“当たり前”になっていきます。家事も仕事も、人に頼られることも。「褒められるためにやっているわけじゃないし」と自分に言い聞かせながらも、ほんの一言誰かに「すごいね!」と言われた時の喜びを、私たちはよく知っ...
2025.11.28 09:00第60回書心展・第59回書心学生展のご案内私が所属する日本書道研究会では、毎年「書心展」「書心学生展」という公募展を開催しており、今年も12月4日から12月11日までの8日間の日程で、東京都美術館にて開催されます。書道展は各地でたくさん開催されており、その多くは会場で作品の閲覧をするのみですが、当展覧会では作品の中の漢字を探すイベント(小学生以下の参加者にはプレゼントがあります!...