肩の力を抜きましょう
最近のレッスンで、生徒さんに「力を抜いてみましょう」と声をかける機会が増えてきました。
練習する姿をじっくり見ていると、だんだんと筆を持つ手がぎゅっと固まり、肩が上がっている…。まじめに取り組んでいるからこそ、「もっと上手に書きたい!」という気持ちが、知らず知らずのうちに体に現れてしまうんですね。でも不思議なもので、そういうときに限って思い通りに筆が動いてくれなかったりします。
「いったん深呼吸して、肩の力を抜いてみましょうか」
そう声をかけると、皆さん、ようやく自分が力んでいたことに気づきます。そして少し力を抜いて書いてみると、ご自身でも驚くほど軽やかでのびやかで、その人本来の良さがにじみ出たような、魅力的な線が書けたりするんです。
私たちは、何かに真剣になればなるほど、つい余計な力が入ってしまいます。でも、真剣になることと、力を入れることは、実はちょっと違う。私もかつて先生に、「この線はちょっとがんばりすぎ」とたびたび指導されましたから、生徒さんの気持ちが本当によくわかるんです。
これは書道に限らず、日々の暮らしにも通じることかもしれません。家のこと、仕事のこと、人との関係…。私たちの毎日はたくさんの「ちゃんとしなくちゃ」にあふれています。どれもこれも「ちゃんとしなくちゃ」と思えば思うほど、肩にぐっと力が入って、心の余白がなくなってしまう。そんなときは少し立ち止まって、自分に「まあ、いいか」と声をかけてみる。すると、不思議と心も身体もゆるんできます。完璧じゃなくても、少しぐらいうまくいかなくても、いいじゃないかと思えてきます。
「さあ、肩の力を抜きましょう」
この言葉は、ちょっと心がザワザワしたときに、本来の自分らしい姿に戻るための、小さな小さな魔法の言葉かもしれません。
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