5歳の女の子が教えてくれたこと

新年度が始まり、一週間が経ちました。

新しい生活をスタートされた方にとっては、ようやく迎えた待望の週末かもしれません。冷たい雨が続いたことで、桜の花も長く咲き続け、東京ではこの週末にもお花見が楽しめそうです。どうぞ、桜を眺めながらひと息つく時間をお過ごしくださいね。


さて、何か新しいことを始めるのにふさわしいこの季節。私の教室にも、新しい風が吹き込みました。5歳の女の子、るかちゃんがお稽古に通ってくれることになったのです。初めてのお稽古では、ふたつのひらがなを筆で書きました。筆、墨、硯、半紙、文鎮――いずれもるかちゃんにとっては初めて触れるものでしたが、その中で、彼女は迷いなく筆を動かしていました。その姿はとても頼もしく、「新しいことに挑戦する」というのは、こんなにも軽やかであってよいのだと教えられた気がしました。 


大人になると、新しいことを始めるときに、つい様々な思いが頭をよぎります。「楽しみだな」と期待する気持ちがある一方で、「うまくできるだろうか」「失敗したら恥ずかしい」「間違えて誰かに迷惑をかけるかもしれない」「なかなか上達しなかったらどうしよう」といった、不安や躊躇も生まれてきます。そんなときこそ難しく考えすぎず、ただ目の前のことに真っすぐ向き合ってみる。分からないことや、できないことがあるのは当たり前。誰かに教えていただきながら、何度も練習し、ひとつひとつ前に進んでいけばよいですよね。そんなことを思った、新年度最初の一週間でした。


いつかるかちゃんが大人になったとき、初めて筆を持った日のことをふと思い出してくれたら――。そんな風に思うと、なんだか胸があたたかくなるのです。

柚墨庵 Yubokuan

字を書くことが好きになる。 自分で書く字を好きになる。 ふだんの暮らしを、書のある暮らしに。 杉並の小さな隠れ家で 書のレッスンをはじめてみませんか。