大人だって褒められたい

最近、あなたは誰かに褒められましたか?

そう聞かれて、すぐに思い浮かぶ人は案外少ないのではないでしょうか。


大人になると、頑張っていることが“当たり前”になっていきます。家事も仕事も、人に頼られることも。「褒められるためにやっているわけじゃないし」と自分に言い聞かせながらも、ほんの一言誰かに「すごいね!」と言われた時の喜びを、私たちはよく知っています。


書道の競書では、毎月優秀作品が選ばれ、写真掲載とともに審査の先生からのコメントが添えられます。このコメントがとても温かいんです。単なる評価ではなく、例えば「深みのある線質が素晴らしい」「原帖をよく観察した明るい作品」「墨量が少し多いが流れが美しい」などと、自分にしか分からないと思っていた努力や、自分では気が付かなかった長所をちゃんと見つけて言葉にしてくださいます。同時に、「次はここを意識するとさらに良くなりますよ」という、未来の伸びしろまで優しく示してくれます。


先日、初めて写真版に作品が掲載された40代の生徒さんがいました。その方は「嬉しくて、家族にも親戚にも自慢しちゃいました!」と照れながら話してくれ、聞いている私まで胸が熱くなりました。褒められる経験は、大げさではなく毎日の景色を変えます。昨日まで少しグレイに見えていた日常に彩りが加わり、もうちょっと頑張れそう!と自然に思えてくるんです。


書道は、そんな「嬉しい瞬間」が意外と多い習い事です。字が整ってきた、筆の動きが軽やかになった、前より集中できるようになった──小さな変化が目に見える形で現れ、それを誰かが見てくれている。日々の生活では気づかれにくい「自分の成長」が、ここではちゃんと可視化されます。 


大人なると、新しいことを始めるのは少し勇気がいります。時間のこと、続けられるかどうか、上手にできるかどうか……。でも、書道は“できる・できない”よりも、“変化が見える”ことが大きな喜びにつながる世界です。柔らかい筆の感触、パリッとした和紙の手触り、心を整える墨の香り。五感をフルに使いながら書く時間は、心をリセットしてくれます。そしてなにより、「褒められる」という、小さなご褒美が私たちの心を満たしてくれます。


自分の努力を誰かが見てくれるという安心感は、大人にこそ必要なものなのかもしれません。新しい一歩は、小さくていいんです。筆を一本買ってみるところからでも十分。

さあ、もうすぐ新しい年になります。新しい年に、新しい習い事として書道を始めてみませんか?

柚墨庵 Yubokuan

字を書くことが好きになる。 自分で書く字を好きになる。 ふだんの暮らしを、書のある暮らしに。 杉並の小さな隠れ家で 書のレッスンをはじめてみませんか。