思うように書けない時には

思うように書けない──。


そんな日は、誰にでもあります。もちろん私も日々感じていること。筆が思うように動かない、字の形がなんだかしっくりこない、昨日はうまくいっていたのに今日はなぜかバランスが取れない……。そんな時つい、「私には向いていないのかもしれない」とネガティブな気持ちになってしまいます。けれど、実はその“書けない感覚”こそが、成長のサインだと思うのです。


書道に限らず、どんなことも学びが進むほど自分に厳しくなり、わずかな違和感に敏感になります。初めのころには気づかなかった小さなズレに気づく。それは、目が育ったということ。つまり、「書けない」と感じるとき、あなたの中で新しい感覚が芽生えているのです。


そんなときに大切なのは、「そういう日もある。」と思うこと。そして、別の書体を書いてみたり、お手本をじっくり眺めてみたりして、少し違うことをしてみる。一旦その場を離れてお茶を飲んでみるのも良いですね。「あぁ書けない…」と感じた時は、気持ちを少しだけ別の方向に向けてみることを、私は生徒さんによくおすすめしています。


少し気持ちが落ち着いたら、そこで終わりにせずに、もう一度先ほど書けなかった文字にチャレンジしてみて欲しいのです。もしそれでも調子が出なかったら、今日の練習はおしまいで大丈夫。


思い通りに書けないのは、昨日までの自分を超えようとしている証拠。「書けない」と感じたときこそ、「お、成長してるな〜!」とワクワクしてみてください。不思議なことに、そうやって続けるうちに、ある日突然「これだ!」と思える瞬間が訪れます。まるで生クリームを泡立てている時に、ふっと手が軽くなる瞬間のように。「こんなふうに書きたい」と頭で思っていたことと、手の感覚がつながるタイミングです。


いつかテレビで、タモリさんがこんなことを言っていました。 

「頑張らない、期待しない、でも諦めない。力を抜いて続けることが一番長続きする秘訣。」

そう、続けることが一番強いのです。一緒に一歩ずつ進んでいきましょう。

柚墨庵 Yubokuan

字を書くことが好きになる。 自分で書く字を好きになる。 ふだんの暮らしを、書のある暮らしに。 杉並の小さな隠れ家で 書のレッスンをはじめてみませんか。