知れば、もっと知りたくなる
7月の終わり、体温を超える39度という信じられない暑さの中、大阪・関西万博に行ってきました。
正直に言うと、出かける前はガイドブックを開いても、あまり興味が湧きませんでした。どのパビリオンが魅力的なのか、何を見ておくべきなのか、まったくピンと来なかったのです。結局、ほとんど予約も下調べもしないまま当日を迎えたのでした。
ところが、会場に足を踏み入れると、その空気に一気に引き込まれました。
まず目を奪われたのは、大屋根リングの迫力。巨大な構造物でありながら木のぬくもりが感じられ、涼しさまで与えてくれる設計に驚きました。会場で訪れたある国のレストランでは、これまで味わったことのないスパイスや香りが口の中に広がり、まさに異文化を五感で体験。予約がなかなか取れず入れなかったパビリオンもありましたが、それすらも「また来たい」と思わせる仕掛けのように感じました。
特に心に残ったのは、中国パビリオンの壁に掲げられた論語の一節「有朋自遠方来、不亦樂乎」。これは、孔子が弟子たちと学びを共にする喜びを語ったものだといわれています。「同じ志をもつ友が遠くから訪ねてきてくれるのは、なんと楽しいことか。」そんな意味だそうです。この暑い中、東京から大阪までよく来てくれたね、と言ってくれているようで、ほんのりと心が温かくなりました。
帰宅してからは、ガイドブックやテレビの万博特集をじっくり見ている自分がいました。「ああ、あの展示はこういう背景があったのか」と知れば知るほど、また行きたくなってくるのです。
「知らないことは、なかなか興味は湧かない」けれど、「一度体験すると、そのことをもっと知りたくなる」ということなのですね。
これは、書道にも通じます。始める前は、有名な先生の作品を見ても、古典の解説を読んでも、難しくて興味が湧いてこないかもしれません。けれど、お手本を見ながら実際に自分で書いてみると、「この形はどうやって筆を運んでいるのだろう。」「どうすればこの墨色が出せるのだろう。」と、もっともっと知りたくなります。体験は知識への入口なのだと、あらためて思います。
まずは動いてみる。知らない世界に飛び込んでみる。そこで手に入れた小さな「知っている」は、次の扉を開く大切な鍵になります。これからも、次はどんな世界と出会えるのかを楽しみに、扉をひとつずつ開いていこうと思います。
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