「にぎり墨」を知っていますか?

先日、私が講師をしている企業の書道部で、奈良墨の錦光園さんを招聘して「にぎり墨」体験のワークショップを行いました。「にぎり墨」とは、柔らかい生の墨をぎゅっと握って、自分だけの墨を作る体験です。ワークショップの様子を、錦光園さんが素敵な記事にしてくださいました。(記事はこちら


ところで、そもそも墨は何からできているのかご存知ですか?

墨の原料は、「煤(すす)」「膠(にかわ)」「香料(竜脳など)」この3つだけなんです。


The シンプル!!!


墨に使う「煤」は、なたね油を燃やした煤(油煙)と、赤松を燃やした煤(松煙)の2種類があり、この2つは粒子の大きさが違うため、墨色に微妙な違いが出てきます。油煙墨は茶色に近い黒、松煙墨は青みを帯びたグレイ。墨は黒一色ではないのです。(詳しくは錦光園さんのサイトへどうぞ。)

煤と膠と香料を混ぜて、よくよく練るとお餅のような柔らかい「生の墨」ができます。通常はこれを木型に入れて乾燥させて、お店で見かけるような長方形の墨ができるのですが、「生の墨」を木型には入れずに、柔らかいうちに手で握って乾燥させると、握った手の形をした自分だけの「にぎり墨」ができるのです。生の墨はほんのり温かく、もちもちしていて、心がふんわりとほぐされるような特別な感覚です…。ぜひ体験してみてほしい!


私も普段の練習は墨液を使うことも多いのですが、作品作りには必ず磨った墨を使います。磨った墨で書いた作品は、立体的で墨液には出せない深い味わいを出してくれます。そして墨が作り出す自然の「にじみ」や「かすれ」は、作品をより魅力的にしてくれます。


書に欠かせない大切な墨を作ってくださる墨屋さんですが、現在なんと日本に9軒(奈良に8軒、鈴鹿に1軒)しかありません。大切な日本の墨を守っていけるよう、私も頑張ってたくさん使おうと思います!


いつもは墨液を使っている、と言う方も、今度は墨を磨って書いてみませんか。

その魅力にはまってしまうと思いますよ!





柚墨庵 Yubokuan

字を書くことが好きになる。 自分で書く字を好きになる。 ふだんの暮らしを、書のある暮らしに。 杉並の小さな隠れ家で 書のレッスンをはじめてみませんか。